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Research Concept

 progress in D1 (2018.4)

本研究課題は,慶應義塾大学 塾内助成 2018年度博士課程学生研究支援プログラムに採択され,助成を受けて進める.

肉体と物質の融合による自己身体の改変・拡張のための設計論の構築

キーワード:人間拡張、心理、身体所有感、身体イメージ、社会的インタラクション

研究の目的

我々が人間社会で生きて行く上で身体には様々な役割があり、状況・目的ごとに身体の存在意義や望ましい姿は変化する。本研究は、実世界において義手・衣服・眼鏡などの物質を肉体に身に着けることによって自らの身体を主体的に最適化することを「自己身体の改変・拡張」と呼び、それに際しての知覚・技能・社会心理との関係性を考察して、自己身体の構成要素を定義し、改変・拡張における設計論を構築する。

 多様な価値観を持つ人間一人一人が主体的に身体を創造し、生活する上で最適な身体性を獲得するための基盤となることを目指す。

研究実績・概要

本研究は前年度に、上肢障害を持つ人の身体性に着眼した義手デザイン・開発をし、ユーザの日常生活における運動能力、義手装着時に伴う身体イメージや身体所有感の変容に関して考察を行った。

具体的には、先天障害による前腕腕欠損を持つユーザの身体イメージに基づいた義手を3Dプリンタで制作した。ユーザは幼少期から日常的に義手を使わずに活動しており、現在は業務内容の都合上で勤務中は電動作業用義手を使用していた。そのために義手操作時の腕の長さに違和感を覚える課題や、生まれ持った腕のまま身の回りのものに触れること、自己表現することへの欲求を抱えていた。そこで腕の断端部周辺に機能を持たせた短い作業用義手をデザインし、違和感の改善に務めた他、ユーザと共に対外発表を行いデモンストレーションを通して価値観の共有活動を行なった。その他にも1件、中途障害による肩欠損を持つユーザに向けた装飾義手の制作を行い、幻肢や身体イメージに対する課題について議論し、考察した。

事例研究を通して、ユーザらは状況に応じて複数の義手を適宜使い分ける習慣がある事が判明した。義手選択の動機や用途を分析した結果、自己身体の改変・拡張に関する要素が類推的に示唆された。そこで本研究では、「知覚的身体」「道具的身体」「社会的身体」の3要素を定義した。

・知覚的身体(Perceptual Body):外界の情報を知り得るための身体。

・道具的身体(Skillful Body):運動能力や目的達成に向けて技能を発揮するための身体。

・社会的身体(Social Body):社会的価値観や他者との関係に基づいて形成する身体。

 肉体と融合される物質が変わるごとに各構成要素の割合は変容する。先天障害による上腕欠損者の例を挙げると、義手未使用時の自己身体は、知覚的身体要素が高い割合を示し、社会的身体要素が少ない割合を示す傾向にあった。作業用義手使用時の自己身体は道具的身体要素が高く、装飾義手使用時の自己身体は、社会的身体要素が高い傾向にあった。

 これらのスタディに基づき今後は、身体所有感・運動能力・身体イメージに関する基礎研究を参考に各構成要素の条件の定量化を行い、義手・衣服・眼鏡等の使用時における自己身体の構成要素のパラメータを分析してモデル化を行う。

 今年度以降の大まかな計画は、(1)複数のケーススタディを通して仮説理論を立て、(2)各構成要素を体現化し具体的に共感/体験可能なアプリケーションを実装し、(3)デモンストレーションやワークショップを通して、仮説実証し、設計論としてまとめる。(1)は現在も行っており、分析用データ収集を行っている段階である。今年度は(2)は(1)と並行しプロトタイピングをしながら進め、年度末までにアプリケーション例を1件制作し、国際学会にて発表およびディスカッションすることを検討している。

期待される効果

 IoT、ロボティクス、サイバネティック・オーガニズムなどの技術革新は自在な身体改変・拡張への可能性が期待されている一方で、実生活での利活用を促進するためには我々人間と日常プロダクトとの根本的な関係性を解明し、ノウハウとして共有していく必要がある。特に福祉分野に着目すると、エンドユーザが求める価値とプロダクトとのミスマッチが多く確認されている。本研究が、設計論として基盤を提示することは、学術貢献の他、個人が自分に相応しい身体を見極め選択する主体性を促すことに効果があると考える。

研究の特徴

 人間が自分自身の肉体に対して「これは私の身体である」と認知する時、何を知覚し、思考し、行動しているのか。これらを解明することは人間科学分野の学術的貢献の他に、福祉機器デザインや人工器官開発などに貢献し、人々がより自分らしく豊かに生活していくことに寄与すると考える。近年では、バーチャルリアリティ分野において仮想世界(サイバー空間)における身体認知の拡張に関する研究が勢力的に成されている一方で、本研究は現実世界(物理空間)での身体改変・拡張を命題としている。

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